ジルオール・パニック



「みんな、席についた?」
 ガタガタガタ。にっこり笑った先生が入ってくるや否や、教室の中がいっぺんに片付いた。

 委員長のユーリスがにぱっと笑って手を上げる。実にかわいらしい微笑みだった。
「はーい、全員そろってます!」
「よーし、じゃあ今日の授業を始めようかな」
 ながーい黒髪のシャリ先生はそう言って、いかにもやる気満々に腕まくりをした。

「あ、あの、読者が分かり易いように説明とか……」
 ナッジが恐る恐ると言った調子で挙手する。
 賛成票、多数。

「はーい黙って黙ってー」
 金〇先生ルックのシャリ先生はにこにこしながら、それでいて容赦なく教壇をバシバシ叩いた。

「えーっと、ではご要望にお答えして、このガッコの趣旨をお話ししませう」
「しませうって何ですかー先生」
「しましょう、っていう意味ですよー」
「あの、でも――ぎゃふん」
 質問しようとしたヴァンに、シャリ先生の容赦ないチョーク攻撃が飛んだ。もはや定番となったこの攻撃に、周りの生徒たちはノートで顔を覆ってぶるぶる震えている。

「こんな風に、ジルオールの人物たちを次々殺して行くのが目的でーっす」
 飽くまで無邪気に、ユーリスが手を上げた。
 直後、ちげーだろという突っ込みに撃沈するユーリス。

「こんな風にどんちゃんやりながら、PS用ゲーム「ジルオール」で、どうやってなるべく多くのイベントを見るかを学んでいく学校です」
 女主が手を上げて、きりっとした顔つきで言った。
 真面目っ子の彼女はひそかに人気があり、周りの男性陣が顔を赤く染める。

「ちなみに偏差値999ね」
「入れねェ!」
 誰かノリのいい人が突っ込み、がやがやと騒がしくなった。
 まぁ普段であればシャリ先生の鉄拳制裁が待っているのだが、どうしたことかシャリ先生、ちょっと自分の考えに夢中で、騒ぎに気づいていない。

 ルルアンタがちょこんと手を上げた。シャリ先生はにっこりと微笑んで指差す。
「あの、好きなEDを見るにはどうすればいいですか?」
「そりゃもう」
 シャリ先生はさらににっこりした。
「押して、押して押しまくるのさ。たいていの少女マンガは、それで落ちるからね」

 話が妙な方向に逸れたせいか、教室の中ががやがやし始める。
 見かねた女主が手を上げた。
「先生、あの――
「質問? あ、いいよいいよ。僕のEDだったら、なんなら今ここで」
 彼女は面食らって言葉に詰まったが、すぐにいい事を思いついた。
「いえ、違います」
 女主はそう言って、毒のない晴れ晴れとした笑みを浮かべた。
「だって、私が見たいEDは――
 女主、某名探偵少年のように指を突き付ける。
「彼のEDだもの」

 一方、指を向けられたエルファスは白い顔を赤く染め、……シャリ先生がにっこり笑っているのに気づいて青ざめた。
「い、いや、別に僕は――
「エルファス、ちょっと話があるんだけど。体育館裏とかで」
「僕は関係ない! あの子が勝手に――
「へぇ。もうあの子呼ばわりだなんて、熱々だねぇ」
「ち、違う、違うってば、わー!!」

 女主はシャリにカオスへと引きずり込まれ掛けているエルファスを見て、こっそり微笑んだ。
 心の中で、舌を出す。
「ま、たまにはこういうのも、いいよね……」
 花のように彼女は笑った。ちなみにこの彼女、見るEDはデフォルトでシャリだったりする。


「……若いですねぇ」
 覗きに来たオルファウス校長は、しみじみと言った。


 エルファスはその後、二度と女主に近づこうとはしなかったと言う……


ハッピー・エンディング?



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