ファンタジスタ・マジック



 はろぅ〜
 僕の名前はS・H・A・L・L・I!
 職業? ああ、かわいそうな皆のために、出張して魔法で願いを叶えてあげてるんだよ。
 魔女っ子シャリ って呼んでね?
 今日は、僕の素晴らしい日常をちょこっと紹介しちゃおうかな。
 では始まり始まり〜

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 ★魔女っ子シャリ 第一話 「えっ、アイツがワタシでワタシがアイツ?」 ★

 元気な女子高生のミチルさんは、セーラー服のまま机に座って、峻厳な面持ちで祈っていました。

「むむむ。どうか先輩が私のものになりますように!」
 邪悪極まりないお願いです。
 でも、そんな極悪人の願いだろうと叶えちゃうのが魔女っ子シャリさ!☆☆

「わ、あなた誰?」
 突然目の前に現れた魔女っ子シャリ君を見て、ミチルさんは目をぱちくりさせています。
 そんな彼女を安心させようと、魔女っ子シャリ君は美少年スマイルを浮かべました。
 俗にそっち系のお姉さんには天使の微笑みとか言われちゃう、あの微笑みです。

 でもミチルさんにそういうケはなかったのか、あんまり効果はありません。
 シャリ君は心の中で罵りつつ、舌三寸作戦に切り替えました。これなら大丈夫! だってシャリ君のお得意ですもの。

「こんにちは☆ 僕は魔女っ子シャリさ。どんな願いでも叶えてあげる、女の子の味方だよん☆ さ、君の願いを言ってごらん」

 ミチルさんはドキドキしながらシャリ君を見ました。
(怪しさ大爆発ってカンジね! でも、この際先輩が手に入るなら悪魔にだって魂渡すわ!)
 シャリ君かわいそうに、これっぽっちも信用されていません。

 でもいくらシャリ君でも、心の中までは読めないので問題ないでしょう(そんなことはない)。

 ミチルさんはうきうきしながら言いました。
「じゃあ、先輩を私なしでは生きられないようにして欲しいの!」
「オッケーオッケー、お安いご用さ!」
 魔女っ子シャリ君、ようやく今日の仕事が終わりそうなのでご機嫌です。
 魔法のステッキ『ゾフォルキラー』を取り出して、軽快なステップを踏みます。
「ゾフォリンゾフォリンゾフォリララ☆ 先輩がミチルちゃんなしでは生きられないようにしちゃえ☆」
 きらきらした光がミチルさんの周りに降り注ぎました。
「明日の朝になれば、効果が出ているはずだよん☆ じゃ、僕はそろそろ行くね!」
 シャリ君はそう言って、窓から飛び降りました。
 下で買い物帰りのお母さんの悲鳴が聞こえましたが、ミチルさんはほくほく顔でベッドに入ります。

「わーい魔女っ子さん、ありがとう。楽しみだなぁドキドキ」

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 翌朝、ミチルさんは早くに起き出して、学校に向かいました。
 でもおかしいのです。どこを探しても、先輩の姿はありません。
(きっとまだ来ていないんだわ)
 そう考えて先輩が来るのを待つのですが、一向に来る気配がありません。先生に聞いて見ても、おかしな返事が返ってくるばかりです。
 とぼとぼとトイレに向かったミチルさんは、びっくりして口を開けました。
「え、何これ……私、先輩になってるぅ!?」
 そう、鏡に映っていたのは見慣れたミチルさんの姿ではなく、あこがれの先輩の姿だったのです。
 ミチルさんは三十秒ほど考え込んで、ここが女子トイレであることに気づいて飛び出しました。蒼白な顔で考え込みます。
(どういうことかしら? 昨日、魔女っ子さんは先輩が私なしで生きられないようにする魔法をかけてくれて……ああっ、私が先輩になっちゃったら、確かに先輩は私なしでは生きられない! でもでも、これじゃ先輩と×××とか××とかできないよぅ)

 どうでもいいですが、健全な女子高生の思考ではありません。
 ミチルさんは先輩の家に行ってみることにしました。

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 一方先輩は、朝起きてトイレに行った時に(というか、ミチルさんはトイレにも行かずに登校したのでしょうか?)女の子になっていることに気づいて、布団をかぶったままガタガタ震えていました。
 そこにピンポーンとインターホンが鳴って、ミチルさんが勝手に作った合鍵で入って来ます。
「先輩! ミチルが来ました!」
 どうでもいいのですが、声が野太すぎて全くかわいくありません。

 先輩は懐かしい自分の声を聞いて跳ね起きました。
「ミチルちゃん? ……って俺じゃないか!」
「ごめんなさい先輩、私、昨日魔女っ子シャリって子にかくかくしかじか」
「なにぃ!? そうだったのか……」
 先輩は考え込んで、ついに言いました。
「よし、じゃあ魔女っ子シャリを呼び出してこの状態をどうにかしてもらおう」
「ええ、それがいいですね先輩」
 二人はう〜んう〜んと祈り出しました。
『魔女っ子魔女魔女魔女魔女シャリ君、出てきてくださいシャリ君君』
 こういう変な呪文がはやっているのでしょうか?
 ともかくも、「呼ばれて飛び出てほほいのほーい」と魔女っ子シャリ君が現れました。

「どうしたの? 二人とも」
 二人が事情を説明すると、シャリ君は頭をかいて朗らかに笑いました。
「ごっめーん、失敗しちゃった☆」
「早く直してよっ、ああでも、この状態ってある意味先輩と合☆体……」
 ミチルさんはそのまま妄想の世界に旅立ってしまいました。
 仕方がないので先輩が交渉すると、シャリ君はにっこり笑って承諾します。
「いいよーん。失敗したお詫びに、二人ともかっこよくアンドかわいくしてあげる!」
 そしてシャリ君が怪しげなステッキで呪文を唱えると、二人は元に戻りました。
「わーい、やったぁ」
「やったやったぁ」
 とても喜んでいますね。よかったですね、ミチルさん。

「うん、今日もいい事をしたから気持ちがいいよ」
 シャリ君はそう言って嬉しそうに笑いますが、不意にミチルさんが気づきました。
「……なんか、私の顔、とんがってない? ビジュアル系?」
「あれ、俺の顔、こんなに女顔だったっけ?」

 冷や汗をかくシャリ君。
 おやおや、今度はかわいくするのとかっこよくするのを逆にしてしまったようですね。

「……あは、アハハハハッ!」
 シャリ君は窓から飛び降りました。
『あ、待てー!! 直していけーー!!』
 閑静な住宅街に、二人の絶叫がいつまでも響いていたそうな。

 めでたし☆めでたし☆

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 バッド・エンド



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